本 悪意
東野圭吾さんの作品である「悪意」を読みました。
この本は、ミステリー・推理小説で、フーダニットやハウダニットではなく、ホワイダニットを軸にした物語です。
物語の前半で事件は解明、「もう終わりか~」なんて思っていると、実はそこからこの小説は動き出します。
それも一度は、上手くストーリーができあがり完結したと思っていると、その全てが覆されて、新たなステージに誘導されていきます。
冒頭でも言いましたが、この小説の軸は、ホワイダニット、犯行の動機が軸になっているわけですが、この真の動機こそが、読んでいる人を衝撃の落とし穴に落とし入れます。
最後の落とし穴にはまるまでに、いくつもの扉を開け、過去に遡り、人間の底知れぬ憎しみや憎悪を垣間見て、真の結末にたどり着きます。(落とし穴のそこに答えがあります。)
作者の東野圭吾によって、痛快なまでにミスリードをされ、振り回されたあとに、真相に行き着くと、タイトルにある「悪意」の二文字が、読者の心に取り残され、なんとも言えない感情に飲み込まれます。
人間心理の深層を見事に書き表していて、ストーリー展開も二転三転とする本作の構造力は、なかなか真似できるものではないなと、感動しました。