死闘。奴がきた!
バイトを終えて家に帰った。
時刻は0時過ぎ。
労働で疲れていたので、シャワーを浴びてとっとと寝ようと思っていた。
着替えとタオルを持ちいざお風呂場へ。
電気をつけて扉を開けた。
その瞬間....!!
奴がいた。
黒光るフォルムと素早い前方移動。数センチの体だが、ヒトに与える恐怖は無限大。
正体はGこと、ゴキブリだ。
こいつを見た瞬間、体は硬直した。
と、同時に!
バイトから帰り疲れ切っていたはずの体から、アドレナリンが湧き出してくるのも感じた。
年に数回の死闘が今宵、幕開けたのだ。
そうとなると、先ずやるべき事は限られた物資の中から武器を調達する事である。
当時はゴキジェットが無く、スプレー以外で殺傷するには何が良いのかをネットで調べた。
そして、一番ヒットした方法が...
「新聞紙を丸めてたたく。」
ふざけるな!
そんな大胆かつ原始的な方法で現代の若者が、奴に対抗できるわけがない。
気を取り直して違う方法も見ていく。
(a)熱湯をかける
(b)食器用洗剤をかける
(c)掃除機で吸う
以上3つの案が有効だと分かった。
次にこれらの案を比較考量する。
(a)は比較的簡単でお湯は沸かせばいくらでもあるので実に魅力的な案に思えた。
ゴキブリは60度以上のお湯をかけると弱まり、温度が上がれば上がるほど即死率が上がるのだと言う。
しかし、あれだけ素早く移動する奴にピンポイントで熱湯を浴びせられるのかに不安の余地が残る。
少しだけかかり、奴に刺激を与えてより獰猛にさせてしまうと考えると非常に恐ろしい。
→よって保留。
続いて(b)。食器用洗剤ということで、化学薬品であるために期待値は非常に高い。
が、これも(a)と同様にピンポイントで命中させる自信がまるでない。しかも、食器用洗剤は発射速度が遅いのが何よりの致命的欠陥になってしまう。
→よってこれも保留。
最後は(c)について考える。
掃除機。あの吸引力を生かしたら、いくら素早いあいつでも吸い取れる。またノズルのリーチもあるため、少し離れた距離からでも作戦を実行できそうだ。
これは、掃除機で決まりだな!
と、思った時ふと疑問が浮かんだ。
「吸い込んだあと、奴はどうなる?」
まだ生きてるじゃねーか!!
これは論外。何も根本的な解決になっていない。目的は奴を葬ることなのに、掃除機のなかに吸われたあいつと同じ屋根の下で眠れるはずがない。
→よってこれもやめておく。
これで全ての案について考えたがどれも決定打を欠く。
結局、
風呂に入る前でパンツ一丁だったので、服を着て、財布だけを手に取り夜中のコンビニへ。
キンチョールのスプレーを手に取る。勝利を確信したので宴のための食料も取る。
結局スプレーかよ!
って思った人。そうです。結局スプレーが1番です。
スプレーが良い理由は、
*ジェット噴射のため遠くからでも奴にアプローチできる。
*何といっても殺虫剤というチート。(即効性)
この2点に限ります。
そしていざ戦場へ。(風呂場)
右手にはキンチョールを握りしめ、意を決して扉をオープン。
前方やや左に奴を確認。右手からチートを噴射。
スプレーがかかってすぐ、奴は激走。
これには焦る。急いで扉を閉める。
心臓がバクバクの中、扉の隙間からスプレーを噴射。
少し外でまつ。イヤホンでは大音量で「憧憬と屍の道」を聞く。(進撃の巨人のOP曲)
そして覚悟を決めて扉をあける。奴は排水溝のところでどうにか逃げようとしていたが、元気はない。
これはチャンス。最後のとどめと言わんばかりに、キンチョールを噴射。数秒間ずっと吹きかける。
ここで、ようやく奴の動きは止まりひっくり返った。
まだ、少し足は痙攣している。ここで先程の3案を思い出す。
「よし。洗剤もかけよう。」
キッチンから持ってきた洗剤を上からゆっくり垂らす。青色の液体が奴を包み込む。
それから数分放置した後見にいくと、奴は生き絶えていた.....。
以上が、先日起こった死闘だ。
家で奴を見かけたら、多くの人は恐怖に駆られると思います。
特に一人暮らしの人だったら、自分でどうにかしないといけません。
恐怖はいつ訪れるかわからない。
だからこそ言いたい。
「殺虫スプレーは買いましょう。」
みなさんが奴の恐怖に駆られる事なく安心して眠りにつけることを願って......。
(終)