本 殺人犯はそこにいる
「現実は、小説よりも奇なり」
読み終えてまず、このように感じました。
この本は、ジャーナリストの清水潔氏が書いた、「北関東連続幼女誘拐殺人事件」についてのルポルタージュです。
17年間で、群馬県と栃木県をまたいで起こった5件の少女誘拐失踪殺人事件。(そのうちの一人の少女は、未だに行方不明のままです。)
当初、警察はこの5つの事件のうち3件の犯人として、菅家利和氏を逮捕、検察は菅家氏の犯行とされる3件のうち1つの事件を起訴、裁判所が無期懲役の確定判決を出しました。
これがあの有名な「足利事件」でした。
清水潔さんは、独自に調査をしていき、足利事件の冤罪の可能性を確かに感じていき、ついには、真犯人とされる人物まで特定することになります。
このような、筆者が莫大な時間と労力を割いた調査報道の軌跡が綴られています。
事件の目撃者、当事件の担当だった県警幹部、被害者遺族など本当に沢山の声を、直接取材して、独自に得た事実を報道していきます。
「日本を動かす」ためには、ジャーナリストととしてどのような報道をするべきか。
警察や検察に真っ向から立ち向かう筆者の執念。
この原動力は、いったいどこからみなぎってくるのだろうか?と思うほどです。
本文中に、その答えの一つがあります。
「小さな声を聞く」
ということです。小さな声は、当事件で言えば被害者の少女たちです。その遺族の方です。
この当たり前だと思える事が、実は何よりも難しくて、忙殺される時の中では、忘れられてしまう事なのかもしれません。
筆者は「小さな声を聞く」を信念に、半ば縛りとして自らに課しつづけ、取材をする姿は、真のジャーナリストを見たような気がしました。
ドラマ化とかしたら、もっとマスに広がって反響ありそうだなぁとかも思いました。
兎にも角にも、衝撃を受けること間違いなしの作品です。何に衝撃して恐れを抱くのかは、読んでみて味わってください!!